収穫祝い 2種類の方法
亥の子
- (上)藁亥の子(長さ42.0cm)、2013年製作
(下)亥の子石(直径15.5cm、高さ12.0cm、重さ6.5kg)
=県歴史文化博物館蔵
亥(い)の子とは、旧暦10月の亥の日に行われる収穫祝いの年中行事で、「オイノコサン」として親しまれている。最初の亥の日を一番亥の子と呼び、二番亥の子や三番亥の子まである。亥の子のやり方は2種類あり、子どもたちが藁(わら)の棒を手に持って地面をたたく方法と、石で地面を打ちつける方法がある。
藁亥の子は「ホテ」「ワラボテ」とも呼ばれ、子どもたちが藁亥の子を手に持ち、家々を訪問して地面をたたいて回り、ご祝儀や餅をもらう。
写真の藁亥の子は、2013年に開催した特別展「民具王国びっくりミステリーツアー」の体験用資料として製作したもので、稲藁を束ねて棒状にしてひもで固くまとめ、握り手の部分には布が巻かれている。
もう一方の亥の子石は、「ゴーリンサン」とも呼ばれ、写真の資料は宇和島市で使われていたもの。丸い石のくびれ部分に鉄の輪がはめこまれ、さらにその輪に複数の小さな輪が付けられている。子どもたちは小さな輪に縄を結び、縄の端を握り、亥の子歌を歌いながらタイミングを合わせて、亥の子石を地面に打ちつけ、家内安全や五穀豊穣(ほうじょう)を祈願して集落内の家々を回る。
亥の子石をつく際には、亥の子歌を歌い、調子を合わせる。その歌は地域により様々であるが、大きく分けると数え歌型と呪詛(じゅそ)型がある。例えば松山市北条地域の土手内地区は数え歌型で、「お亥の子さんのみょうには、一に俵を踏んまえて、二でにっこり笑うて、三で酒を造って、四つ世の中良いように、五ついつもの如くに、六つ無病息災に、七つ何事ないように、八つ屋敷を広げて、九つ小倉を建て並べ、十でとーんとおさまった、もうよかろ」と歌いながら、家の庭先で亥の子石をつく。家によっては亥の子石にお酒をかけることもあり、その時は「お亥の子さんが酔うた、酔うた…もうよかろ」と再びつく。
松山市北条地域では、1年以内に子どもが生まれた家を「ヤド」として、亥の子石や餅、果物やお菓子などを祭壇に供えて、子どもの誕生と成長を盛大に祝う。宇和島市吉田地域のように、伝統ある亥の子の存続を目的に各団体が集まり、つき比べをする「亥の子大会」を実施しているところもある。
今年(2024年)の一番亥の子は11月7日。やり方も歌も多様なだけに、みなさんの地域の亥の子がどんなものか気になる今日この頃である。
藁亥の子は「ホテ」「ワラボテ」とも呼ばれ、子どもたちが藁亥の子を手に持ち、家々を訪問して地面をたたいて回り、ご祝儀や餅をもらう。
写真の藁亥の子は、2013年に開催した特別展「民具王国びっくりミステリーツアー」の体験用資料として製作したもので、稲藁を束ねて棒状にしてひもで固くまとめ、握り手の部分には布が巻かれている。
もう一方の亥の子石は、「ゴーリンサン」とも呼ばれ、写真の資料は宇和島市で使われていたもの。丸い石のくびれ部分に鉄の輪がはめこまれ、さらにその輪に複数の小さな輪が付けられている。子どもたちは小さな輪に縄を結び、縄の端を握り、亥の子歌を歌いながらタイミングを合わせて、亥の子石を地面に打ちつけ、家内安全や五穀豊穣(ほうじょう)を祈願して集落内の家々を回る。
亥の子石をつく際には、亥の子歌を歌い、調子を合わせる。その歌は地域により様々であるが、大きく分けると数え歌型と呪詛(じゅそ)型がある。例えば松山市北条地域の土手内地区は数え歌型で、「お亥の子さんのみょうには、一に俵を踏んまえて、二でにっこり笑うて、三で酒を造って、四つ世の中良いように、五ついつもの如くに、六つ無病息災に、七つ何事ないように、八つ屋敷を広げて、九つ小倉を建て並べ、十でとーんとおさまった、もうよかろ」と歌いながら、家の庭先で亥の子石をつく。家によっては亥の子石にお酒をかけることもあり、その時は「お亥の子さんが酔うた、酔うた…もうよかろ」と再びつく。
松山市北条地域では、1年以内に子どもが生まれた家を「ヤド」として、亥の子石や餅、果物やお菓子などを祭壇に供えて、子どもの誕生と成長を盛大に祝う。宇和島市吉田地域のように、伝統ある亥の子の存続を目的に各団体が集まり、つき比べをする「亥の子大会」を実施しているところもある。
今年(2024年)の一番亥の子は11月7日。やり方も歌も多様なだけに、みなさんの地域の亥の子がどんなものか気になる今日この頃である。
(専門学芸員 松井 寿)
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